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2002/03の湾岸署

[2002年03月30日(土)]

テレポート駅前。
「おっ、わっ」
等と言いながらキョロキョロしている真下。
雪乃が真下の視線を辿る。
女の子たちのスカートがヒラヒラと揺れている。
ちょうど通り過ぎようとした女子高生のスカートが一段と舞い上がり、真下はそれに合わせてまた
「おっ」
と声をあげた。
「まーしーたーさんっ!」
怒る雪乃。
「は、はいっ!」
我に返る真下。
「この猥褻刑事!」
ひじで真下の横腹を激しく打ち付ける雪乃。
それを微妙に避けながら真下が声をあげる。
「刑事だってただの男ですよ!先輩だって『人間だもの』って言ってたし」
「青島さんはいいの」
「ど、どうしてですか」
「目つきがやらしくないから」
優しく微笑む雪乃。
「何ですかそりゃ。贔屓だ。偏見だ。刑事なんだから平等に見てくれないと・・」
と両手を広げてオーバーアクションの真下。
それを遮り、雪乃。
「誰でしたっけ?刑事になる前の女の子に勉強教えながらやらしい視線を浴びせてたのは」
何も言えなくなり立ちつくす真下。

[2002年03月28日(木)]

現場へ向かう道すがら。
「先輩、タバコ変えたんですか」
真下が青島の手元を見て言う。
「あ、これ?武くんにもらったんだよ」
と青島は赤いパッケージから一本タバコを抜き取りくわえた。
「武くん?タバコなんて吸いましたっけ?」
「いや、パチンコかなんかの景品みたいよ」
「へぇ」
ちょうど桜の木の下を通りかかる。
風に舞う花びらが二人の肩に触れては落ちていく。
「『僕は鼻がこれですからタバコなんて吸えません』ってティッシュ持って泣いてたよ」
「武くんの花粉症ひどいですもんね」
「花粉症とタバコは関係ないと思うけどなぁ・・」
そう呟いた青島は、タバコの煙を吐き出すと桜の木を見上げた。
「そういや署長が花見だ酒だと騒いでたけど、騒いでる間に散っちゃったね」
「そうですねぇ。今年の桜早かったですもんね」
そういうと真下も見上げた。
ちょうどその時まとまって落ちてきた花びらの束が真下の顔を覆った。
うっぷなどと言いながらそれを払いのける真下。
それを横目に青島。
「あっ、忘れてた」
「なんです?」
そう返した真下の頭には花びらが数枚残っている。
「桜餅」
と青島。
「桜餅?」
「すみれさんから桜餅買ってきてくれって頼まれてたんだ。覚えといて」
「なんで僕が。先輩が頼まれたんでしょ?」
顔をしかめる真下。
「もし万が一買い忘れてみろ。『なにやってんのよあんた達!このバカ!』とか怒鳴られるぞ」
「なんで『あんた達!』なんですか僕は無関係ですよ」
「食べ物が絡んでそんな道理が通用する相手だと思うか?」
もう短くなったタバコを振り回し力説する青島。
「・・・確かに」
納得する真下。
「だろ?」
と言いながら歩を進める青島。
「先輩もそんな思いしてまで頼まれなきゃいいのに・・」
と呟いた真下の言葉は、桜の木が風に揺れた音でかき消されたのであった。

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