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2003/1の湾岸署

[2003年1月28日(火)]

「おっ、青島、久しぶり」
和久が後ろから肩を叩いた。
「あ、おはようっす」
書類書きの手を休めて顔を上げる青島。
灰皿には既に吸い殻が山積みになっていた。
「この三日間どこ行ってたんだよ」
「えぇまぁいろいろと」
灰皿の吸い殻がもう一つ増える。
「しかし正月休みこんなにずれて取ったらダメっすね」
「どこも空いてていいだろうによ」
和久は帽子を脱いで椅子に腰掛けた。ウゥと唸りながら腰をトントン叩いている。
「いや、混んでる方が賑やかでいいですよ」
そう言いながらポールペンを回す青島。
「で、おめぇ何やってんだ」
青島の書類を覗き込む。
「いや、まぁ、えへ」
書類は始末書であった。
「なにが『えへ』だよ。こんどは何やらかした」
嬉しそうに訊く和久。
「いや、東京タワーに友達連れてったんすけど、そこでひったくり捕まえたんすよ」
鼻を掻く青島。
「で、ちょこーっと」
と二本の指で小さな隙間を掴んで見せる。
「そいつと格闘したんすけど、ちょうどそこで三田署の連中が薬の受け渡しの張り込み中だったらしいんすよね」
「またやっちゃったか」
とますます嬉しそうな和久。
そこへ雪乃が二人の会話を邪魔しないよう静かに笑いながらお茶を置いていった。
「結局薬の方も無事現場押さえて捕まえたんすけどね、『もうちょっとで取り逃がすところだったぞ!』って、コレ」
二本の指は今度は始末書をつまみ上げた。
「まぁ大丈夫すよ。慣れっこですから」
「誰も心配なんてしてねぇよ。それにそんなもんに慣れっこになるな」
和久は指導員の腕章をポンポンと叩いて見せた。
苦笑いの青島。
「しかしおめぇは」
とお茶をすする和久。
「賑やかがいいとか言いながら、結局自分で賑やかにしてるじゃねぇか」
「だから賑やかな方がいいんすよ。オレが目立たなくて済みますから」
と微笑む青島であった。

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