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嫉妬心とキャバクラ男

あいも変わらず平凡に慌ただしい湾岸署の朝である。
青島はデスク周りをきょろきょろと、何かを探しているようだ。

「すみれさん。このへんに青い封筒置いてなかった?」
「しらなぁ〜い。」
「いや、こんくらいの封筒なんだけどなぁ。」
「なぁに。大事なもの?ちゃんと自分で管理しなさい。」
「昨日、帰るときここに置いてったんだよ。おかしいな。」
「私、昨夜は当直だったけど、見てないわよ。」
「あっ。ゆきのさん。ここにあった青い封筒見なかった?」
「また何か無くしたんですか?どんな封筒ですか?」
「いや、こんくらいの封筒なんだけど。」
ゆきのを巻き込んでの封筒探しが始まったかと思いきや、和久指導員を引き連れて袴田刑事課長登場。
「青島。何やってんだ?」
「和久さん、昨日俺が帰りに、ここに封筒置いたの見てましたよね。」
「あの、青いやつか?」
「そうっすよ。ほら、やっぱりここに置いて帰ったんだ。すみれさん、ほんとに知らない?」
「知らないわよ。」
何故か朝からカップのキムチラーメンをすすっている。
館内放送のスピーカーがけたたましく鳴った。
「警視庁から入電中。警視庁から入電中。管内初芝曙橋付近で男性がバットのような物を持って暴れている模様。通行人に怪我、救急車が急行中。」
「青島君。すぐ行って。」
「課長ぉ。俺、昨日のコンビニ強盗の裏付けあるんですけど。」
「しょうがないでしょ、他にいないんだから。」
「あれ、係長と真下は?」
「魚住君と真下君は本店の応援。新城管理官から青島はよこすなって。」
「じゃあ和久さんに・・・。」
「俺は指導員だろ。」
「いや、和久さんも青島君と一緒に現場に行ってください。」
「ゆきのさんの研修やんなきゃだろ?」
「今日、署長のところにホノルル警察署の署長がお見えになるんで、ゆきのさんには通訳をやって欲しいって。私もこれから署長の接待の手伝い。」
「きったねぇなぁ。」
「しょうがないでしょ。所長の接待、他にできる人がいないんだから。ほら、青島君。早く行って。和久さんも。」
「わかりましたぁ。ねえ、すみれさんほんとに知らない?」
「青島ぁ!行くぞ!!」
「はぁい!すみれさん。見つけたらとっといてね。すぐ、もどるから。ゆきのさんもね。頼んだよ・・・。」

青島と和久の2人が刑事課から出て行くと、ゆきのはその辺りを探し出したが、すみれはあいかわらずラーメンをすすっている。
「青島さんの封筒って、いったい何なんでしょうね。あんなに気にしてるんだから大事なものなんでしょうけど。」
「大した物じゃないわよ。」
「知ってるんですか?」
すみれはおもむろに引き出しを開け、青い封筒を取り出し、「これ。中見てみれば。」
「持ってるんじゃないですか。」
受け取ったゆきのは封筒の中を覗いて、「何ですか、これ?」
「さあね。」
そこに真下課長代理登場。
「あれ。真下さん、本店じゃぁ?」
「新城管理官が、君は本庁からの研修員だから帰っていいって。」
「キャリアは違うわね。」
「あっ。そうそう、すみれさん知ってます?昨日、先輩のとこに女性が尋ねてきたの。」
「何それ。」急に表情が険しくなる。
「ほら、前に先輩が担当した事件の被疑者。振られた男の髪切っちゃった人。」
「あぁ。あの青島さんの情報提供者になってた綺麗な人?」
ゆきのは思い出したようだが、すみれはまだ険しい顔だ。
「そうそう。その綺麗な人。」
「なんで、その女が青島君尋ねて来んのよ。」
「なんか、こんど六本木でキャバクラ始めたらしくて、挨拶に来たみたいですよ。先輩、招待券もらったって喜んで僕に見せてました。」
「キャバクラの招待状ぉ?これ?」
ゆきのはさっきの青い封筒のなかからチケットらしい紙片を取り出した。
「そう、これ。なんでゆきのさんが持ってんの?」
すみれがそのチケットを奪って半分に破ってごみ箱にすてた。
恐ろしげに見る真下とゆきの。
すみれはデスクに戻ると、さっきよりも勢いよくラーメンをすする。が、2人の視線に気付くと振りかえった。
「何?何んか用?」
怖い。

そんなことになってるとはつゆしらず、青島は
「和久さん、キャバクラって行ったことあります?」
「何を言ってんだぁ、お前は。」
青島は1人楽しそうである。
「キャバクラ・・・。」

平凡な1日の始まりである。
Written by はた
2000.3.15
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